システム開発のオフィスの本棚によく置かれている率が高そうな本と言えばご存知『人月の神話』。
それが読まれているか、読んだ人なりの感想が有るか、更には実践されプロジェクトに反映されているかは、ここでは……あえて聞かないでおきましょう。
あれ?『人月の神話』、ちゃんと読んでたっけ?と思って本棚から引っ張り出してきたら、「図1.1 プログラミングシステムの製品の進化」に書かれている「単なるプログラムを製品として完成させるためには9倍のコストがかかる」という話で、もう涙が溢れてきた
— magnoliak🍧 (@magnolia_k_) 2021年3月10日
現在出版されている「20周年記念増訂版」は、1995年に、オリジナルの出版(1975年!)に、1986年に発表された論文である”第16章 銀の弾などない”と、それ以降の議論が第17章〜第18章、第19章として加えられている。
つまり、一冊の本の中でも20年の時間が流れているのだ。
本書のタイトルにもなっている『人月の神話』は、この本の中では第2章で語られているに過ぎない。また、オリジナルの『人月の神話』で語られていることはどちらかというとマネジメント視点が強く、いきなり「エンジニアになるぞ!」みたいな人が読むには少し退屈かもしれない(読み物としては面白いと思えるけど)。
それより、今から、この20年代に読むなら”第16章 銀の弾などない”と”第17章 「銀の弾などない」再発射”から読み始めるのがお勧め。冒頭に書いた通り、元々この章の内容はオリジナルの『人月の神話』には含まれていない、独立した内容なのだから、ここから読んでも全然問題無い。
(ちなみに、第17章の冒頭に、”「人月の神話」はさかんに引用されても議論されることがなかった”と書かれているのが興味深い……おそらく面と向かって聞けば誰だって人と月は等価交換できないと言うに決まっている……ただ、それを回避するために正しい手段が取れているか?というだけで)
第16章では、正しくソフトウェアを作っていくためには近道はなく、地道に積み上げていくしかない、ということが理由と共に書かれている。そしてそこには現代においても相変わらず「銀の弾」を探そうとしている人や、「銀の弾」だと宣伝している人が多いことを気づかせてくれる。そういう意味でも現代においてこの章を読む価値は未だ色褪せていない。
きっと色んな場所の本棚に眠っているはずだから、探し出して、借りて、読んでみると良いと思います。貸してくれた本が凄く読み込まれている時は、感想とか、実践している内容を聞いてみるといいと思います。本が凄く綺麗だった時は……お礼だけを言っておきましょう。