Magnolia Tech

いつもコードのことばかり考えている人のために。

「小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード」を読んで、書かれているとおりにできるか?と考えた

「その課題はもう全部この本に書いてあって、DHHたちが通った道だ」シリーズ2冊目(別にそんなシリーズ名でもないし、出版はこちらの方が早いけど)、「小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)」を読んだ。

1冊の「リモートワークの達人 (ハヤカワ文庫NF)」を読んで、悔しい思いをした話のエントリはこちら。

blog.magnolia.tech

リモートワークの達人 (ハヤカワ文庫NF)」と同じジェイソン・フリード、ディヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン著、37signals(今のBasecamp)での経験則から書かれたという点も同じ。原著は2010年に出版されてて、日本語訳も2012年に出ている。つまり、既にもう散々語り尽くされている。

しかし、全然知らなかった。読んでいなかった。

所謂SaaSと呼ばれるサービス提供形態の普及、利用といった点では当時よりも現在の方が格段に進んでいるし、大小さまざまなサービスが使われるようになってきて、やはり当時よりも現在の方がよりリアルにこの本に書かれたことを実感できた。確実に10年(もしくはそれ以上)先取りしたことが書かれていたと言える。

やっぱりこの本ももっと早く知っておけばよかった、悔しい。

「リモートワークの達人」はリモートワークの普及というパラダイムシフトの前後を跨いで読んでおきたかったし、「小さなチーム、大きな仕事」はSaaSが日常により普及する(スマホ以前・以後と言ってもいいのかも)前後を跨いで読んでおきたかった。

ただ、この本の前提として、SasSというスケーラビリティが有り、サービス内容の変更が比較的容易なビジネス手段が起点になっていることは間違いなく、全員が真似できるか?と聞かれるとそうではないのではないか……とまず考えた。本当にみんながここに書かれている通りにできるのか?やるべきなのか?


「そんなこと現実にはうまくいくわけないよ」

本文の冒頭から読み進めていくにつれてみんなが口にしそうな台詞が、先回りして、もう書かれていた。そう、同じことをやろうとすれば、そう言うしかない。

でも、この本で書かれていることは一貫して、“自分たちが本当にやるべきことにフォーカスする、そのために必要な環境を作る、そして妥協しない、やる”と言っていると理解した。

そもそも前提として、この本で扱われている37signals(Basecamp)という企業が提供するものがインターネット上で提供されるSaaSという、ソフトウェアの梃子の力が働きやすく、後からアップデートが可能で、スケールしやすい分野にフォーカスしているからこそ、という側面はあると思う(さらに言えば地理的な制約を受けづらい)。

だからこそ、自分たちの過去の経験に強く依存した直感に反した記載がどれだけ有るか?それで視点を変えられるか?という見方をした方が良いのではないか。


本文は“今、居る地点で何を考え、どうやって一歩を踏み出し、そのまま歩き続けるか”ということが書かれている。

  1. 見直す
  2. 先に進む
  3. 進展
  4. 生産性
  5. 競合相手
  6. 進化
  7. プロモーション
  8. 人を雇う
  9. ダメージ・コントロール
  10. 文化

特に、この辺りのトピックは興味深かった。

  • 「失敗から学ぶこと」は過大評価されている
  • 必要なものは思ったより少ない
  • 中途半端な一つの製品より、良くできた半分の製品
  • 「なるたけ早く」は毒

とはいえ、いくら他人が成功した要因を並べても、同じ成功は起きない。

成功の再現性は極めて低い。おなじことをやるというより、自分たちのやるべきことにフォーカスするための発想と捉えた方がいいのではないか。


あと、一つ気になったトピックとしては、「競合相手以下のことしかしない」が有る。これは先日紹介した「UNIXという考え方」にも出てきた「劣る方が優れている(worse is better)」にも通じる発想だな、と感じた。

"worse is better"についてはここ数年いろいろなところで語られているけど、まだまだ自分の行動の起点にまで持って来れるほど腹落ちしていない気がする。

t_wadaさんのスライドに端的にまとめられていた。

speakerdeck.com

Rui Ueyamaさんのブログエントリも、実体験に基づく鋭い解説が書かれている。

note.com

同時多発的に、いろいろな場所で、古いUNIXの設計思想が引き合いに出されて語られるのが非常に興味深い。そうゆう時期なのかもしれない。


明日から自分が、「自分のやるべきことにフォーカスするための第一歩」が踏み出せるか、まだ考えている。

次は、「NO HARD WORK! 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方 (早川書房)」を読む予定。

そして、相変わらず「リモートワークの達人」はお勧め。