Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
- 作者:Jennifer Davis,Ryn Daniels
- 発売日: 2018/03/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
買ったはいいけど、なかなか読む時間が取れなかった「Effective DevOps」を読み始めた。
一言でまとめれば、以下のツイートで全部かな。
Effective DevOps、いくら読み進めても、どんな開発組織でも普遍的に問題になりそうな所をどうやって乗り越えていくか?って話が続いていて、もしタイトルで避けた人とかいたらもったいないなーって思った
— magnoliak (@magnolia_k_) 2018年7月1日
より良い環境を作るためにどうするか?って話でしかなく、ツールとか開発手法とかじゃない
以下、章ごとの感想
1章〜4章
1章から4章までは歴史や概念の説明なので、少しでも最近の開発手法を知っていたり、それなりの経験がある人であれば後から読んでもいい気もするが、2.2.2だけは印象深いトピックが書かれていてぜひ開発組織に属する人であれば読んで欲しい内容(あとで5.2.1でも再度出てくるけど)。
要はミスが起きた時に、個人の責とするか、組織の問題とするか、なのだけど、それを「ヒューマンエラーはトラブルの原因だ」と考える文化と、「ヒューマンエラーをシステムのもっと深いところにある問題の兆候」と考える文化という言い方で説明するところが凄くしっくりくる。
とくに現代的な開発手法やツールの発展を考えると、20年同じ手順を秘伝のタレ的な知見に基づいて続けていく(しかもその根拠は既に失われている)という現場は少なく、個人の責を問うにはあまりに学ぶべきことは多いし、変化も激しい。また、人もどんどん入れ替わっていくし、伝統的な先輩から後輩への伝達とも限らない(ある日突然アウトソーシング先が入札でガラっと変わることだってあり得る)。
そう考えると個人を責めてもしょうがなくて、組織で考えていかないとトータルでは良くなって行かないよねって考え方は実に正しいなって。
5章 devopsに対する誤解とアンチパターン
ある程度の開発経験が有る人であれば、5章の「5.1 devopsに対するよくある誤解」と、「5.2 devopsのアンチパターン」から読み始めると良いかなって思った。特に、5.2は一番最初に読んだ方が良い章。この章に対して納得感が有るか無いかで、この本から得られるものが有るか無いかははっきりすると思う。
「Effective DevOps」を読み返しているんだけど、5.2のアンチパターンのところだけでもいいので、みんな読んだ方がいい
— magnoliak (@magnolia_k_) 2018年7月1日
挙げられているのは「非難文化」「サイロ」「根本原因分析」「ヒューマンエラー」
なるほど!というね
6章はⅡ部の導入部なので飛ばして…
7章 コラボレーション
ここは完全に組織で仕事をしていく上での普遍的な話にフォーカスしている。
- 7.3 個人の違いと経歴、背景
- 7.4 競争優位を得るためのチャンス
- 7.5 メンターシップ
- 7.6 マインドセット入門
- 7.7 マインドセットと学習する組織
- 7.8 フィードバックの役割
- 7.9 評価とランキング
- 7.10 コミュニケーションと対立の解決スタイル
- 7.11 共感と信頼
- 7.12 人材配置と人事管理
これ、完全に組織論、人材論になっているってことがよく分かると思う。個人的には「7.6 マインドセット入門」あたりが興味深かったけど、本当にこの章はdevopsに特化した内容ではなく、どうやってより良い組織を作っていくか?という話が続くので、ひょっとしたら人によってはガッカリしたり、意外な発見が有ったりするのでは、と思う箇所。
だからこそ冒頭のツイートに繋がるんだけど、ひょっとして開発プロセスや、ツールの使い方の本だと思ってこの本を読まないとしたら、本当にそれはもったいないって。開発チームのマネジメントを行う人、特にこれからリーダーになるような人はまず読んだ方が良い。5章と7章だけでも良いので読んで欲しい。
以降はチームでの仕事をどうやってより良くしていくか?という話や、(概念的な意味での)ツール導入、devopsをスケールさせる話とかなので、一気に読むより少しずつ自分の状況に合わせて読み進める方が良いと感じた。
おわりに
全般を通して「これがdevopsだ!」というより、一貫して「良い開発組織であり続けるためには?」という話が続く所が良い本。
ただ、上司にdevopsの導入を進言する時には使いづらいかもね:)
300ページ超は、この手の本としてはそこまで大ボリュームではないけど、それでも全部を一気に読み切ろうとすると消化不良を起こしかねないような「考えさせられる」本であることは間違いないので、あまり慌てずゆっくり(できれば周りの人とディスカッションしたりしながら)読んだ方が良さそう。