所謂ビジネス書、マネジメント論、組織論みたいな本が苦手であまり読むことが無いのだけど、以前読んだ『エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング 』は、「あーこれなら読めるし、納得感があるな」と、当時周りの人に勧めまくった。
2018年の出版で、出てすぐに読んだ割には、このブログでは紹介していなかったなーと思って、2023年の再読の感想。
サブタイトルに「リファクタリング」というキーワードが出てくるくらいなので、エンジニアリングに対して一定の理解のある人には刺さるキーワードが数多く出てきます。冒頭から「不確実性」の話が始まり、それは「エントロピー」へつながり、コンピュータサイエンスを学んだ人にはお馴染み(?)のシャノンのエントロピーの定義が登場します……組織論の本なのに。
エンジニア視点のキーワードから人の思考の話、コミュニケーションの話、組織の話、マネジメントの話と続いていくのだけど、そのキーワードの差し込み方が絶妙なところが良い。
取り組む作業の5W1Hが揃っていない状態、つまり遂行にあたって何らかの課題がある場合、対象を構造的に、抽象的に捉え、さまざまな情報を収集、組み合わせ欠けている要素を補完するスキルが必要になってくる……というか、世の中そんなことばかりなわけで。
ただ、そんな時に、先輩・上司のオレオレ経験談は過去に向かっては有効だけど、不確実性が高くなっている状況で、現在、または未来に全然役に立たなかったり、逆に間違っていたりすることもある。そんなときはこの手の、「問題の構造」を明らかにしてくれる書籍を一通り読んでおくのは有効で、決してすべてを鵜呑みにはしてはいけないし、杓子定規に適用してもいけないけど、一つのリファレンスとして引っ張り出してくる価値はある。
それはマネジメントする側もそうだし、マネジメントされる側も知っておいた方がいい。自分がどう見られているか、どう管理・コントロールされようとしているか、その手の内くらいは理解していた方がいいよね。
目次 Chapter 1 思考のリファクタリング 1-1 すべてのバグは,思考の中にある 1-2 不確実性とエンジニアリング 1-3 情報を生み出す考え方 1-4 論理的思考の盲点 1-5 経験主義と仮説思考 1-6 全体論とシステム思考 1-7 人間の不完全さを受け入れる Chapter 2 メンタリングの技術 2-1 メンタリングで相手の思考をリファクタリング 2-2 傾聴・可視化・リフレーミング 2-3 心理的安全性の作り方 2-4 内心でなく行動に注目する Chapter 3 アジャイルなチームの原理 3-1 アジャイルはチームをメンタリングする技術 3-2 アジャイルの歴史 3-3 アジャイルをめぐる誤解 3-4 アジャイルの格率 Chapter 4 学習するチームと不確実性マネジメント 4-1 いかにして不確実性を管理するか 4-2 スケジュール予測と不確実性 4-3 要求の作り方とマーケット不安 4-4 スクラムと不安に向き合う振り返り Chapter 5 技術組織の力学とアーキテクチャ 5-1 何が技術組織の“生産性”を下げるのか 5-2 権限委譲とアカウンタビリティ 5-3 技術的負債の正体 5-4 取引コストと技術組織 5-5 目標管理と透明性 5-6 組織設計とアーキテクチャ