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いつもコードのことばかり考えている人のために。

『私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化』を読んで、勉強することへの取り組み方について考えたこと

ときどき、TwitterのTLに流れてくる情報をもとに本を買うことがある。

普段、読書といっても技術書や、好きな作家の小説に偏りがちなので、自分が自然に手に取らない本を読むためにも「教えてもらったものを、とりあえず”買って”読んでみる」という方法は有効だと思っている。


今回それで知って、読んで面白かったのが、この『私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化』。

ソフトウェアエンジニア界隈でよく議論になる「エンジニアは土日も自主的に学習すべきか」という話題が有って、その是非はここでは触れないけど、”そもそも学習ってどうすれば効果的なのか?”ということは意識しておいた方がいい。昔、改めてプログラミングを勉強しなおそうと思った時に、入門書を買ってきて頭から読み始めて、ノートにメモを取ったり、掲載されているサンプルコードを打ち込んでみたりしても、何だか全然身についている感覚が無かった。だけど、勉強会やカンファレンスに参加して、色々な人の取り組みを聞いたり、実際に気になった機能を自分で書いてみたり、紹介されたコードを読んでみたりするうちに、段々と自分でもコードの書き方が身についてきた感覚が得られるように変わっていった。

それ以来、学習のステップや、環境次第で、学んだことが実際の「知識」や「能力」として身についていく度合いは大きく変わっていくものなんだな、ということを意識するようになった。


本書は「能力」や「知識」とは何か、それらは思ったほど固定的なものではないし、それらを身につけていく過程も単純ではなく、いろいろな特性が有る、というテーマで書かれている。

第1章 能力という虚構

第2章 知識は構築される

第3章 上達する―練習による認知的変化

第4章 育つ―発達による認知的変化

第5章 ひらめく―洞察による認知的変化

第6章 教育をどう考えるか

特に、第1章で語られている「能力には文脈依存性が有ること」と、第2章で語られている「知識は直接伝わるものではなく、情報から、その人の中に構築される、とても属人的なもの」という整理が興味深く、この本を読むことでこの辺りの認識を変えられたのがよかった。

「情報」がそのまま「知識」になるわけではないし、何ができて、何ができないか、どのくらいできるか、という「能力」についても、極めて、その状況に応じて発露する度合いは変わってくる、という学びが最大の収穫だった。また、本書で一貫して主張されているのが「学びについて、学校教育を基に理解しようとするが、必ずしもそれは正しくない」という点も改めて考えてみると納得感が有った。


自分や、他人(組織のメンバなど)のスキルを伸ばす上で、やり方や、指導方法についてのヒントを得たい人にはすごくお薦めの1冊。