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2023年に『リモートワークの達人』を読む…10年目のリモートワーク環境を考えながら

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今から約3年くらい前、色々な会社でコロナ禍によるリモートワーク強制移行が話題になっていた頃『強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」』という単行本が、文庫化にあたって『リモートワークの達人』というタイトルになって出版された。

タイミング的には絶妙なタイトルの変更。

コロナ禍による「とりあえずのリモートワーク移行」が始まり、みんなが「リモートワークとの向き合い方」に悩み始めた頃で、まさに「人々が求めていたもの」感が半端なかった。それに単行本の書名にある「37シグナルズ」は2014年に「Basecamp」と社名も変わっていたので、ずばり『リモートワークの達人』と変えてしまうところが絶妙。

自分も「リモートワークでのチームビルディングってどうすればいいのか」という話していて、「それはもう全部この本に買いてある」と言って紹介してもらって読んだ。リモートワークに関する興味も有ったし、Ruby on Railsを産んだBasecampのジェイソン・フリードと、ディビッド・ハイネマイヤー・ハンソン(DHH)の共著、というだけでも興味が有ったし。

当時の感想は、冒頭のブログエントリに書いた通り。


原著の『REMOTE: OFFICE NOT REQUIRED』の出版が2013年なので、今年で丁度10年経過して、書かれていることが今でも通じるのかな、と思って読み直してみた。

元々この本の良かったところは、実際にリモートワークを実践し、成功したサービスを生み出した”経営者の二人”が書いているところだったと思っている。経営者目線だからこそ、細かいテクニック的なところよりも、それが組織や、個人にどう良い影響をもたらすのか、それは実践可能なことだ、というメッセージが有り、それが有るからこそ人材採用や、マネジメントに関する説明が説得力を持っているし、今でも読み直してもいいかなと思わせる理由になっている。

技術やツールは変わっても採用やマネジメント上のポイントはそうそう変わらないから。

(逆にセキュリティのことが書かれたページは、間違ってはいないけど、今では全然足りない)


さて、2023年に読み直した感想だけど、帯に書いてある「存在感は仕事でアピールしよう。」「部下を見張るのはやめにしよう。」「怠けより働きすぎに注意しよう。」というメッセージは相変わらず刺さるけど、前半の啓蒙的な章は「そうですね」以上の感想は抱かなくなってしまった。

後半の「リモートのコラボレーション術」「リモートワークの落とし穴」「リモート時代の人材採用」「リモート時代のマネジメント」といった章も多かれ少なかれ、「そうだなー」「できているなー」という部分もあった理、「そこまで徹底できているか?」という振り返りに使える部分は有るな、とは思ったけど、結局は「見えない不安」との付き合い方なんだなと。

それはリモートワークかどうかは実はあまり関係無くて、それがたまたま極端に出てしまうリモートワークという形態では意識的にやっていかないと上手くいかないけど、リモートワークでなくても多かれ少なかれ意識しないといけないことばかりだった。


アフターコロナになって「リモートワークでなければならない社会的な強制力」は無くなってしまった。

それまでのリモートワーク主体の働き方を止めて、出社主体に戻す会社も出てきたし、もっとリモートワークに移行するといっている会社も出てきた。

色々な選択肢が有って、濃淡が出てきている中で、少なくとも「通勤って避けられるなら避けた方がよくない?」とか、「そんなにミーティングいらなくない?」とか、みたいな価値観は共通認識になってて、さすがにそこは戻らない気もする。

それに、リモートワークだろうと、そうでなかろうと「必要な情報は記録され、オープンに共有されている」「すべてのコミュニケーションを同期にしない」といったプラクティスに反対する人もいないだろうし。

そういう意味ではリモートワークするかどうかじゃなくて、「自分たちに合ったやり方は、自分たちでちゃんと考えましょう」でしかないんだろうな。

新卒で会社に入った瞬間からリモートワークが当たり前だった、という世代の人たちが組織の中心になっていくと、組織文化も勝手に変わっていくしね。

世の中がどんどん変わっていく時代に、過去の成功体験を捨てて、自分の振る舞いを変えるのには丁度良い体験だったと思うんだよなー。


ただ、やっぱり働き過ぎは良くないよね、それはそう。


リモートワークという制約と自由が同居するスタイルに合わせて働き方を見直してみましょう、という本だと思って読むと、今でも読む価値は有る、というのが今回読んだ感想のまとめです。


ちなみに、この本の舞台であるBasecamp社は、2021年に社内での政治的な議論を禁じるという経営陣の決定を契機に大量離職が起きている。

報道されている内容を読む限りは、リモートワーク中心のワークスタイルを起因とするコミュニケーションロスが原因、ということではなさそうだけど、コミュニケーションの難しさを感じる出来事だった。

techcrunch.com

www.theverge.com


あ、あとリモートワークの心得といえば、コロナ禍が始まる前に、えいのうさんのブログエントリを読んでいて、”リモートワークをやるにあたって個人として気をつけるべきこと”として「気持ちを切り替えるために着替える」だけは事前に学習できていました。これだけはずっと守っています。まずは個々人の営みとしての、気持ちの切り替えを意識的にやるって大事ですね。

blog.a-know.me


とりあえず、オンラインミーティングの印象の良い終わり方、挨拶の仕方のベストプラクティスを誰か教えてください、よろしくお願いします。