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いつもコードのことばかり考えている人のために。

あのころ夢見たUSB PDの大統一充電環境はやってきたのかな…USB PD充電器を選ぶときに考えたこと

先日、USB Type-Cケーブルを選ぶのは難しい、というエントリを書いた。

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USB Type-Cが登場したとき、一番期待したのがUSB PD(Power Delivery)だった。USBで最大100Wの給電ができるから、もうこれで機器ごとに違う専用のACアダプタを持ち歩かなくても済む!と期待した。ガジェット好きな人たちが夢見た大統一充電環境が実現すると思ってた。

そして徐々にUSB PD対応の機器や、充電器が増えてきた。USB PDまでの電力は必要ない機器でも、充電の端子がUSB Type-Cに変わってきた。これで大統一だ!………でも、やっぱりUSB PD(Power Delivery)に対応した充電器を選ぶのは結局難しいなぁと思ったので、その調べたことの記録。


とりあえずの、選び方

Type-Cケーブル選びと違って、充電器によってサポートしている電力も全然違うし、給電したい機器の数や種類によっても全然違う。

なので「これだけ買っておけば間違いなし」というのは無いのだけれど、自分の環境と同じような環境(60WのノートPC、20W以下の機器が複数、従来のType-Aでの機器が複数)だったら、という条件だったらという前提で読んでください。

合計出力表記に注意する

例えば、とある充電器の説明に以下のように出力する電力についての説明が書かれている。

PD対応のUSB-Cポートから最大45W、3つのUSB-Aポートを合わせて最大20Wの合計最大65Wの高出力で充電が可能です。

この場合、USB PD対応のポート(Type-C)はあくまで45Wまでなので、Type-Cポートを使う上ではこの”合計最大"にはまったく意味が無い。うっかり”65W"に注目してしまって60WのノートPCを持っているのに、このような充電器を買わないように注意すること(うっかり買いそうになった)。

たいていよく読めば分かるようになっているけど、よく読まないと分からないところがUSB PDの規格の難しさ。

2つのType-Cポートがあるときは、同時利用時の出力に注意する

最近は2つのType-Cポートがある充電器が増えてきた。ただし、ほとんどの機種で両方にケーブルをつないだときと、片方にだけケーブルをつないだときで、出力される電力は変わる(総出力から按分される)ので、意図せず低い出力で使っていた、ということになる。

そんなことに気をつかわずに済むように消費電力の大きなノートPCはポート一つの充電器を使う、としておいた方が、精神安定上、良い。

あくまで二つのポートを"同時に"使ったときに、それぞれのポートの出力がどうなるか、よく確認してから選ぶこと。特に最近は、等分に按分されるものだけでなく、30Wと18Wのように、傾斜で按分されるものもあるので注意。

充電器がサポートする電圧と電流の組み合わせを確認する

USB PDの充電器の仕様にはサポートする最大の電力(30Wとか60Wとか)のほかに、必ずサポートする電圧と電流の組み合わせが書かれている(もし、書かれていなかったら、使わない方が良い)。

例えば、「5V=3A / 9V=3A / 15V=3A / 20V=3A」のように、書かれていると15W〜60Wまでサポートしていることが分かる。

USB PDの規格ではPower Rateによって、出力側がどのような電圧と電流の組み合わせをサポートしなければいけないのか決められている。

f:id:magnoliak:20201219144055j:plain Universal Serial Bus Power Delivery Specification Revision: 3.0 Version: 2.0より引用

これを見れば、USB PDが「大は小を兼ねる」規格であることが分かる。

また、オプションで他の電圧(12Vとか)をサポートしている場合もある。

給電したい機器が必要とする電力を確認する

給電したい機器のスペックに書かれている消費電力を必ず確認する。

ただし、充電器はサポートする電圧と、電流の組み合わせまでしっかり仕様に書かれているのだけど、肝心の給電したい側の機器の仕様にそれが書かれていないことが多い。手持ちの機器の中ではUSB PD対応のモバイルバッテリーしか書かれていなかった。

なので、まずは給電したい機器の消費電力が、充電器がサポートする出力の電力と同じか、より大きいことを確認することになる。

ノートPCのように消費電力が大きい機器(45W〜60W、更には100W)で、より低い出力(30Wとか)での充電もサポートしているものもある(MacBook Proとか)が、当然充電時間は長くなるし、負荷が高い処理を行っていると、給電が追いつかずバッテリーが減っていくので、緊急時以外は使わない方が良い。しかし、緊急時には有難い機能である一方で、実際にどれが使えるかはスペック表からは分からない。

例えば「MacBook Proは30Wの充電器でも充電できる」というレポートはたくさん出回っているけど、Appleの公表するスペック表には書かれていない。

また、表記されている消費電力を下回った給電を一切サポートしていない(動作しない)機器も当然ある。

サポートする下現値はスペックとして公表されていないことが多いので、実際に試してみるか、ブログなどのレポートを参考にするしかない(どちらにしても、あくまで自己責任だけど)。

手元にあるPixel3もUSB PD以外の充電方法(Type-A→Type-C変換ケーブルなど)も含めてさまざまなパターンで充電できることがレポートされているけど、仕様上は あくまでUSB 「Type-C 18 W アダプター USB-PD 2.0 対応、18 W 急速充電」と付属の充電器を使ったときのことしか書かれていなかったりするし。

結局、「これじゃあよー分からん」となってしまうので、サードパーティ製を選ぶより素直に純正を選んだ方がいいかも…みたいな気持ちになってきて、ここが一番USB PDの分かりづらい点。

モバイルバッテリー

特にUSB PD対応の大容量モバイルバッテリーは注意が必要で、以前は出力が小さいものが多く、例えば消費電力60WのMacBook Proを充電できるUSB PD出力対応のモバイルバッテリーが、消費電力45WのThinkPadを充電できなかったりする。

最近は出力が大きなモバイルバッテリーも増えてきたので、特にWindows PCを使う人はモバイルバッテリーの出力には注意した方が良い。

いま、消費している電力を確認する

その機器が、複数の電圧・電流での給電をサポートしているとしても、現在どの組み合わせで給電されている(消費電力がいくつかのか)のかを分かる方法が提供されていないことが多い。

PCは比較的きちんと提供されていて、例えば、macOSの場合、消費電力は、システムレポートの”電源”を参照すると分かるし、以下のようにコマンドでも取得することができる。

$ ioreg -rn AppleSmartBattery | grep '"AdapterDetails"'
      "AdapterDetails" = {"Watts"=60,"PMUConfiguration"=1452,"IsWireless"=No,"Current"=3000,"Voltage"=20000}

常時表示したい時は、以下の記事が参考になる。

qiita.com

ThinikPadも専用のアプリで現在の消費電力が分かるようになっている(他のWindows PCも同様のソフトがあると思われる)。

このような仕組みを使えば、うっかり、小さな出力のUSBポートに繋いで思ったほどの給電になっていない!ということが回避できる(というか、どの機器でも標準で確かめる方法を提供して欲しい)。

USBの電流チェッカも安価に売られているので、これを使って確かめる手もある(誰でも買うようなものではないけど…)。

おわりに

とりあえず手持ちの機器の中で一番大きな消費電力に合わせて充電器を選んでおけば、”外出時の”大統一充電環境は作れる気がする。大きめのノートPC以外はせいぜい20W程度の消費電力であることが多いので、PDでなくてもそんなに充電時間は変わらないので、とりあえずポートが多いものを用意しておけばいいや、という結論になった。

ただし、結局どの電圧・電流の組み合わせをサポートしているのか、機器側が明示していないので、スペックベースでの確実性で選べないところが、ほんとに面倒。

個人の買い物ならいいけど、「保証が無い」世界で大量の導入が「やってみるしかない」なのは、普及のためにも良く無いと思うのだけど。

結局、USB PD対応の機器が増えている割には一つの充電器のType-Cポートは二つが限界だし、一つあたりの電力の出力は小さくなってしまうし「これひとつで全部同時に充電!」とまではいかない2020年の年末のようです。